ロボットやAIなどの産業応用が期待されるなか、吉野家では外部の知見を取り入れながら、店舗ヘ積極的に「テクノロジー」の導入を進めている。「ひと」がやらなくても良いものをテクノロジーで代替し、働く「ひと」が生み出す付加価値を向上させるのが大きな狙いだ。日本を代表する外食チェーンである吉野家が研究者と目指す10年先の未来について話を聞いた。

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働くひとが輝ける舞台を研究者と共に創造する
~その研究成果、吉野家で実証してみませんか?~

株式会社吉野家 未来創造研究所
未来施設・設計 古田 勝己 氏
未来施設・設備 部長 春木 茂 氏
未来施設・設計 廣橋 誠 氏
未来施設・設計 佐藤 淳輔 氏

全てのひとが活躍する場を創る

吉野屋ホールディングスは、1899 年の吉野家の創業以来出店を続け、世界 23 エリアに約 3400 店鋪を展開、年間来客数 4.4 億人、2 万人以上の雇用を生み出す飲食業界において世界を代表する企業に成長した。「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、「新しいビジネスモデル」の創造、「飲食業の再定義」に向けて、新たな価値創造を進めている。中でも、未来の飲食業のあり方を考え続け、新たなテクノロジーを店舗に導入することで「ひと」が介在することで生まれる価値の極大化を図る部署が未来創造研究所だ。「飲食業は “ おいしい ” のように情緒的な側面が多く、あまりテクノロジーが入ってこなかった。しかし、人がやらなくても良い作業はテクノロジーで補完し、生まれた余力でお客様へのサービスを充実させたい。また、従業員への負担ももっと軽減させたい」と同研究所の春木氏は話す。近い将来確実に起こる少子高齢化の社会に備え、アクティブシニアや女性が楽に楽しく働ける職場環境を目指しテクノロジーを活用した店舗づくりを進めている。

オープンイノベーションにより実現する吉野家ラボ

研究者やベンチャー、大企業、町工場など様々なチームで積極的に研究を推進する未来創造研究所。設立以来、すでに多数の研究成果の社会実装が実現している。例えば、シフトを自動で作成する「勤務スケジュール作成支援ソフト」では、AI と行動心理学を活用して、勤務表上の欠員シフトへの候補者をリコメンドする機能を開発。スケジュール調整の負担の軽減に貢献している。また、手入力していたメニューの注文操作を音声に置き換えて行う「音声認識レジシステム」や、協働ロボットを活用した「自動食器洗浄ライン」も一部店舗へ導入され、食器洗浄作業の軽減を実現している。研究、店舗実証から導入までプロジェクトを同時並行で推進し、従業員が最大限お客様へのサービスに時間を注ぎ込める店づくりを始めている。

10年先の店舗を研究者と共に

2015 年より吉野家ではリバネス研究費を活用し、3 年から 5 年先だけでなく、5 年から 10 年先の未来を見据えた研究を開始した。例えば、おいしさを追求するための食材の構造解析及び加工流通の検討、視覚や聴覚など店舗環境の最適化による顧客満足度の向上、数理モデルによる最適な客席レイアウトの構築など、直接お客様への価値提供に繋がる研究を行ってきた。昨年の研究費では、快適な店舗環境を実現するために東京・大阪・名古屋の店舗で約 300人の従業員へアンケート調査を実施。今後は店舗を実証フィールドとして活用し、従業員にとって最も快適な店舗環境条件を導き出していく予定だ。「これまでの飲食のイメージや習慣にとらわれずに、一見無謀とも思える課題にチャレンジしてほしい。そのためには店舗を利用した研究にも積極的に協力します」。研究者にとっての最大の魅力の一つは、全国に展開する吉野家を研究フィールドとして活用できることかもしれない。

働く人が輝ける舞台を創る

「うまい、はやい、やすい」に「心地よい」を加え、顧客感動満足の実現を目指す吉野家。お客様に満足していただくを追求するためには、働く人も心地よい環境、心理であることが重要だ。食の安全、従業員のスケジュール管理、業務効率の改善等、様々な課題と日々向き合う飲食業界において、テクノロジーによる課題解決とそれによる従業員の付加価値向上は欠かせない。例えば、付加価値が向上することで、従業員とお客様のコミュニケーションの時間が増加する、コミュニケーションの新たな手法ができる、調理にかける時間を増やしてより美味しい料理を提供するなど、お客様の心地良さを追求していくのが目的だ。人のいない無人店舗を目指すわけではなく、人がやらなくても良いことをロボットや AI が実現し、働く人の輝きの向上を目指す。「『ひと』を活かした様々な価値創出を実現するために、飲食業界の人間では思いもよらない視点で、10 年後の吉野家を共に創造する研究者からの応募を待っている」。2025 年の飲食業の再定義に向けて、研究者と共に吉野家はどのような進化を続けるのだろうか。

吉野家賞 募集開始!

● 採択件数:若干名
● 助成内容:研究費50万円+店舗等を研究・実証試験フィールドとして提供
● 申請締切:終了しました

吉野家賞
◎過去の採択テーマ

第28回リバネス研究費(2015年6月)
テーマ:解凍肉におけるタンパク質分解とドリップについて
小南 友里 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程2年)

第32回リバネス研究費(2016年6月)
テーマ:音響環境における周波数特徴と嗜好性の関係
松本 結 氏 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 ポスドク
テーマ:五感情報提示により食品の情報的価値を向上させる食体験拡張手法の研究
鳴海 拓志 氏(所属:東京大学大学院 情報理工学系研究科 講師)

第37回リバネス研究費(2017年6月)
テーマ:数理モデルによる最適な客席レイアウトの研究/シミュレーションによる店員の動線と連携を考慮した動きやすい店舗の研究
柳澤 大地 氏(東京大学 先端科学技術センター 准教授)

第41回リバネス研究費(2018年6月)
テーマ:店舗の環境が調理従事者の働きやすさおよび顧客の満足度に与える影響
須藤 美音 氏(名古屋工業大学大学院 社会工学専攻 准教授)

現在募集中の第45回リバネス研究費
◉大正製薬ヘルスケア・ビューティケア賞

対象分野:
人々の健康と美に寄与するあらゆる研究
本能・感性・五感に関わる研究、情報工学・人間工学・行動科学・認知科学・ 生命科学、機能性素材、処方設計・製剤化技術など、 あらゆる分野からのアプローチを募集します。

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円
申請締切:2019年7月31日(水)24時まで

大正製薬は、「人々の健康でより豊かな暮らしの実現に貢献する」ことを理念とし、様々な事業に取り組んできました。ヘルスケアの概念は既に治療から予防に変わりつつあり、またテクノロジーの発展により、健康管理や美との向き合い方はさらに変化しています。 その一方で 、人が本能的に求めるもの 、健康で美しくいるために本当に必要なものは古来から変わらないのかもしれません。本研究費を通じて、人の「健康」と「美」についてあらためて考え、 新たな価値を生み出すチャレンジを行っていきたいと考えます。 まだ研究の種でも構いません。ヘルスケア・ビューティケアの世界で、共に研究に取り組んで下さる方をお待ちしております。

◉日本の研究.com賞

対象分野:研究世界の地図を描き、新たな知識への道筋を創り出すためのあらゆる研究

日本の研究.comを活用することで実現する「研究者と新たな知識の遭遇」をテーマとして 、あらゆる研究を募集します。哲学・デザイン・アート・論理学・数学・歴史・文学・社会科学・心理学・プロセスシステム工学・情報工学・科学社会学などあらゆる分野の研究者からの応募をお待ちしております。

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円
申請締切:2019年7月31日(水)24時まで

日本の研究.comは競争的資金の研究課題をも とに構成した国内随一の研究課題データベース です。国内で行われている研究の動向や、研究者同士の関連等のデータを有しています。私たちは日本の研究.comのデータベースを用いて、誰しもが過去の知見を基に新たな知識を生み出せる世界を作りたいと考えています。そのために、新たな知識に到達するための道筋、道筋を見極めるための研究世界の地図、を共に議論し、創っていく仲間を求めています。

◉老化制御研究推進賞

対象分野:生体の老化機構あるいは 老化に伴う生体内の変化に関する研究
採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円
申請締切:2019年7月31日(水)24時まで
老化研究は食事、睡眠、活性酸素など様々な要因 からアプローチされていますが、今回の募集で はこうした既存の要因だけにとらわれず、様々な視点からのアプローチをお待ちしています。さらに、老化の亢 進・抑制、あるいは細胞の状態の巻き戻し(例えば若返りなど) に関わる物質の研究についても申請をお待ちしています。また、申請を通じて自分のフィールド以外の研究者や企業とも老 化の研究を推進していきたい人を歓迎いたします。

◉𠮷野家賞

対象分野:
働くひとの付加価値を向上させるためのあらゆる研究
ロボット、データサイエンス、情報通信、XR、コミュニケーション、薬学、医学、材料工学、電子工学、人間行動学、心理学、経済学、建築学、デザイン、ものづくり、など幅広い科学・技術分野の研究を募集します。
採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円
申請締切:2019年8月31日(土)24時まで

世界中で多くの雇用を生み出している飲食業界ですが、人手不足や、原価などコストの上昇の他、食の安全、従業員のスケジュール管理、業務効率の改善等 、 様々な課題と日々向き合っております。「ひと、健康、テクノロジー」をキーワードに掲げる𠮷野家では、ひとのいない無人店舗を目指すわけではなく、ひとがやらなくても良いことはロボットやAIなどのテクノロジーを駆使し、お客様とのコミュニケーションを大切にし、働くひとの付加価値向上を目指しています。今回の研究費はすぐに実装できることでなくても大丈夫です。
分野を問わず自由な発想で、生産性を向上させる研究テーマを募集します。採択されたアイディアには研究費をお渡しするだけでなく、実際に𠮷野家の店舗等を活用した研究や実証試験も全面的にご協力いたします。

リバネス研究費

LNest Grant

リバネスでは2001年の創業以来、一貫して研究を志す若手人材の育成を続けてきました。「科学技術の発展を支え豊かな社会を実現する研究者」を育て社会に排出する。その想いをかたちにしたのが、研究助成制度「リバネス研究費」です。
助成対象:自分の研究に熱い思いを持っている学部生・大学院生〜40歳以下の若手研究者
用途:採択者の希望に応じて自由に活用できます

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リバネス研究費

株式会社リバネス

Leave a Nest Co., Ltd.

2002年6月設立。資本金6000万円、社員数56名(2016年5月現在)、15名の理工系大学院生が集まって設立された日本初の科学教育ベンチャー。
社員すべて理系の修士・博士号取得者で構成されている。専門知識を持つ人材の育成を通じて、科学技術と社会をつなぐ事業を展開。企業の新規事業開発コンサル業務などを行っている。

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株式会社リバネス