ACQUITY APC システム

ポリマーは、暮らしの中であらゆるところで使われている。ポリ袋などのビニール製品、合成繊維、ゴム成型品、塗料、接着剤、インク・トナー、医薬品、化粧品など、私たちの生活はもはやポリマーなくしては成り立たない。そんな身近なポリマーは、とくに化学材料には欠かせない化合物である。どんなポリマーが、どのように使われるかによって、製品の質は大きく左右されるし、また画期的な新材料が生まれる可能性がある。

そのポリマーを分離・分析する世界初のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)がリリースされたのは1963年。アメリカのWaters Corporationによるもので、現在でも広く使われている。しかし、現在ポリマーが使われる製品や材料は急速に増え、種類も量も拡大し続けている。分析をもっと速く、正確に、使いやすくならないかというニーズに応え、化学品メーカーのダウケミケルとの共同開発によって2013年に生まれたのが、APC(アドバンスドポリマークロマトグラフィー)システムだ。

ACQUITY APC システム

APCシステムの心臓部は、3 μm 以下の微細なポアをもつ頑健なACQUITY APC カラムと、超低拡散なACQUITY APC システムで、これにより、これまでにない高分離能が実現する。ウォーターズが2004 年に世界で初めて販売を開始した 超高速高分離液体クロマトグラフ ACQUITY UPLC システムの技術をGPCに応用することで誕生した。

日本ウォーターズ株式会社は、分析機器(液体クロマトグラフと質量分析計)と関連製品の輸入、販売、サポートを行い、分離・分析科学、ラボの情報管理、質量分析の技術とラボ向けソリューションを提供している。
日本ウォーターズ株式会社のテクノロジーセンター シニアスペシャリストの山田光一郎さんは「APCは特に化学材料の分野で多く使っていただいております。材料分野では、より高い品質や機能といった付加価値や、今までにない材質が求められています。その際、入っているポリマーの質や状態を知ることが非常に重要になります」と語る。

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マーケティングサービスコミュニケーションスペシャリストの長谷川千寿子さん

「製造の現場である企業様には、APCの特性や能力をご理解いただき、多く使っていただいていますが、研究・開発の場である大学などアカデミアには、まだ知名度が低い現状です。APCで何ができるのかを知っていただければ、アカデミアの世界でも貢献することができると考えています」と、マーケティングコミュニケーション シニアスペシャリストの長谷川千寿子さんは言う。

GPCで見えなかったポリマー分布の微細な差

合成ポリマー材料の分子量には必ず分布がある。分子量が100,000程度のポリマーを合成する場合、その分布をコントロールすることが望ましいが、従来のGPCでは分子量100,000と100,200の差が見えなかったのだ。

「この厳密な差が見えることで、製品の品質は大きく変わります。たとえば、プラスチック材料だと分布が狭ければ、硬いけれども折れやすい性質が、広いとやわらかいが折れにくい性質になります。ポリマーの分子量分布が一定でなければ、製品の折れやすさ等にばらつきがでることになるのです」と、アジアパシフィック ケミカルマテリアル マーケットディベロップメントの佐藤信武さんが説明してくれた。

GPCとAPCの結果比較図
GPCとAPCの結果比較図

化学材料の特設ページ

「一定のレベルの製品を均一に製造することは、ものづくりにおいては絶対に重要なことです。さらに、品質を高めるだけではなくて、これまでできなかった、新しい材料が生まれる可能性も出てくるのです」

良品と不良品の違いをAPCが解決

佐藤さんは、ある企業でAPCが活躍したケースを教えてくれた。
「現場の工場で出た不良品の分析のケースです。現場感覚で不良品だが、なぜ不良になるのかがわからないということで、そこの研究室に良品と不良品が持ち込まれました。ところが、研究室の分析では良品と不良品の差が出てこなかった。そこで当社のラボに持ち込まれてAPCで分析したところ、はっきりとした違いが出て原因がわかったということがあります。もし、持ち込んでいただけていなかったら原因はわからず、不良品が混ざったまま生産されていたかもしれません。不良品が出続けることは、企業のブランドイメージまでも下げかねない事態です。新しいものには特に厳密さが求められますし、従来の分析機器が対応しきれていないケースも多いようです」

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化学材料部門 佐藤信武さん

高速・高分離のメリットはスピードだけではない

APCのもう一つの特徴は、分析の速さである。特に分析前の準備には、これまでは半日はかかっていたが、APCは最短1時間で開始できるという。

「分析を行うのは、結局は人です。その人の負担を減らして使いやすくすれば、おのずと機器の能力も発揮されると思います」と、佐藤さん。

そんなに急いでどうするの? ちゃんとした結果は出るの? という声も聞かれたというが、ものづくり現場では緊急事態になればなるほど、スピードが要求される。 山田さんは品質管理の危機対応のケースを説明してくれた。

「もっとも威力を発揮しているのが、不良解析の現場ですね。とにかく問題を速く、正確に探り当てないといけない。危機対応は消費者の安全はもちろん、対応する企業も工場の生産ラインも、多くの生命線を背負っています。いかに速く対応できるかが、その明暗を分けることになります」

高分子・低分子の解析を同時に行い、時短・効率化を実現

分析スピードに限れば、これまでも高速GPCが使われている。だが、APCの強みは、高分子量ポリマーだけでなく低分子量成分の分析も1台で行えることだ。たとえば、プラスチックには耐久性を高めるためにポリマー以外にも、添加剤、残存オリゴマーなどの低分子化合物が入っている。従来の方法では、材料を前処理により、高分子用、低分子用サンプルに分けてから、それぞれGPCとLCの別々の装置で分析する必要があった。しかし、APCにはその必要がなくスピードアップが実現する。それは、従来よりも詳細な研究結果を効率的でしかも迅速に取得できるという結果にもつながる。

前処理の手間が少なく、分析が効率化されることで、使用する溶剤も少なくて済む。当然、使用する電力も抑えられるし、何より分析に携わる人たちの拘束時間も少なくなる。ランニングコストが下がると同時に、グリーン・ケミストリーといわれる環境配慮や、働き方にも大きく影響するのだ。

研究者を支えるウォーターズのサポート体制

日本ウォーターズでは、サポートに力を入れている。全国9カ所にサポート拠点を置き、技術者が機器の故障やメンテナンスなどハード面から、使い方・分析手法といったアプリ・ソフト面まで全面的にサポートする。

「社員の半数がサービス・サポートに従事しています」と、佐藤さんは言う。

技術者は、Waters Corporationでの世界統一の資格を持ち、毎年、テストを受けることで技術レベルを保っている。インターネット上でのサポートも受け付けている。

業界トップのサービスサポートを提供

ウォーターズWebinarで場所を選ばずセミナー受講

また、セミナーや教育コースも用意されており、各セミナーはインターネットのウォーターズWebinarでライブ視聴することもできる。また、ビデオ形式のオンデマンドWebinarもあり、インターネット環境があれば職場や出張先での受講も可能だ。

ウォーターズ Webinar ライブ・オンデマンド

「当社の分析器は分野としても特殊なものですから、分析する人たちを支えることが何よりも大切であると考えています。特に開発などは“誰よりも先に”というスピード感も要求される世界。当社のサポートですばらしい発見ができた、というようなことがあれば、何よりもの喜びですね」 と長谷川さんはアカデミア分野での貢献への期待を語った。

ラボルームで“お試し”を

日本ウォーターズの東京・大阪には、最先端のテクノロジーを装備した、数々のシステムが設置されたラボルームが用意されている。こういうことを試してみたい、この方法は使えるのだろうかという相談も、サンプルを持ち込んでの試用も可能だ。ラボルームには個別の控室が用意され、他の利用者と接触しないように打ち合わせなどできるように配慮されている。
取材中も2社がラボルームを使用していた。
「実験中もご要望があればパーティションなどで仕切るなど、できるだけご要望にお応えできるように準備しておりますので、気軽にお問い合わせいただければと思います」と、佐藤さん。

ラボルーム

これからの分析 “慣れ”から脱して、もっと見える世界へ

GPCが誕生して60周年を迎えた。ポリマーを利用する製品はますます増え、小型化、軽量化、耐久性などさらに高い品質が求められている。新材料の開発を得意とする日本が遅れを取るわけにはいかない。しかし、GPCには技術の進歩があまりなかったと山田さんは言う。

「GPCはすぐれた分析器ですが、使う側が慣れてしまって、不満が出にくかった面もあります。求められる品質はどんどん変わっていきます。携帯電話を考えてみても、ガラケーからスマートホンへとあっという間にシェアが移り、さらに人々は便利なものを求めていきますよね。その製品の中に使われている素材や部品も、どんどん変わります。それなのに今までと変わらない分析をしていたら、どうしても遅れを取ってしまいます。 APCによってポリマーの世界は、もっと見えるようになります。GPCで解決できないもの、まだ見えていないものがあると感じておられる研究者は、少なくないと思っております。もっとできるはず、という問題意識を当社にぶつけていただきたいですね」

日本ウォーターズ株式会社

Nihon Waters K.K.

ウォーターズは、世界中のヘルスケア、環境保護、食の安全、水質管理分野の発展に貢献しています。未来につながる実用的な科学革新を提供しつづけることによって、研究開発に携わる企業や専門機関の成功に寄与します。

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