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生命科学部先端生命科学科の本橋 健 教授は、シアンLED*1を使用した安全、かつ安価なDNAアガロースゲル検出システムを開発し、成果を発表しました。本研究の成果は、国際学術論文誌であるPLOS ONE に2019 年9月9日付で公開されました。

 

研究背景

遺伝子工学技術は、現代の生命科学分野の研究で使われる重要な技術です。そこでは、遺伝子本体であるDNAをアガロースゲル電気泳動で分析することを日常的に行います。その方法は、古くから紫外線(UV)とエチジウムブロマイドと呼ばれる試薬を用いるのが一般的でした。紫外線の波長は短いため、分析するDNAを損傷する可能性があります。また、それを扱う研究者にも害があるため、防御して実験を行わなければなりません。これに加えて、DNA染色試薬であるエチジウムブロマイドには、発がん性があると言われており、取扱いに注意を要します。そのため、近年、エチジウムブロマイドの代替試薬として、発がん性の低い各種の代替試薬が開発されていますが、これらを検出する際に、エチジウムブロマイドほど高感度に検出できないことが多く、広く普及しているとは言い切れません。

 

研究概要

今回開発した検出システムには、エチジウムブロマイドの代替試薬として市販されている発がん性の低いDNA染色試薬を用いました。現在、これらの試薬を使用してDNAを検出する際には、試薬のタイプにより、UVで検出する場合と青色LED光で検出する場合があります。

 

1つめのシステムは、UVで検出するタイプの染色試薬用に開発しました。このタイプの染色試薬でDNAを検出するには、市販のUVトランスイルミネーターを用いるのが一般的ですが、今回、この試薬を検出するのに適した長波長の紫外線のみを発する市販のブラックライト*2を光源として使用しました。そのため、非常に安価に励起光システムが構成できます。

 

2つめは、UVよりも安全な可視光(青~緑)で検出される代替試薬用に開発しました。このタイプのDNA染色試薬は、これまで、青色LED光で検出することが一般的でした。ただし、これらのDNA染色試薬の最適な励起波長は、青色LED光よりも長波長側にあるため、効率的に検出できているとは言えませんでした。LEDの普及に伴い、青色LEDだけでなく、その他の波長のLEDも一般的となっています。そこで、これらのDNA染色試薬に最適な励起波長領域をもつシアンLED光を用いて、検出システムを構成しました。今回開発したシステムでは、市販のシアンLED電球を使用しても、十分に高感度にDNAを検出することができ、その感度はUV-エチジウムブロマイド染色と同程度の検出感度でした。今回開発した2つのシステムは、双方に一般的なライトを光源としているため、これまでに比べて格段に安価に、かつ簡便にアガロースゲル中のDNAを検出することができます。そのため、生命科学の研究を進めるうえで重要な遺伝子工学技術の普及に貢献することが期待されます。

 


用語解説

*1シアンLED:青色と緑色の間の波長領域を示すLED。最近、青色LEDだけでなく、このタイプのLEDも普及し、一般的なライトが手軽な価格で入手できるようになった。

 

*2ブラックライト:ブラックライトシアター(黒いパネル布に蛍光絵の具で色を塗り、動かしながら遊ぶ)や美術品の鑑定に用いられている一般的なライト。

 

謝辞

本研究は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「植物における生態進化発生学研究拠点の形成 −統合オミックス解析による展開−」、および発酵研究所(一般研究助成)「微生物のもつシームレスクローニング活性を利用した新規シームレスDNAクローニングシステムの開発」の支援を受けました。

 

掲載論文

論文タイトル:Development of highly sensitive and low-cost DNA agarose gel electrophoresis detection systems, and evaluation of non-mutagenic and loading dye-type DNA-staining reagents.

 

掲載誌:PLOS ONE 14, e0222209(2019)

 

DOI:10.1371/journal.pone.0222209

 

和文タイトル:「高感度、かつ低コストなDNAアガロース電気泳動検出システムの開発、およびプレローディングタイプDNA染色試薬の評価」

 

著者:Ken Motohashi(本橋 健、責任著者)