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概要

言語による情報伝達には限界があるという立場に立ち,土地勘のない地域でも国内外からの来訪者が効率的に観光することを支援するために,拡張現実(Augmented Reality: AR)により言語に依存しない手段を利用した観光ナビゲーションシステムを開発しました.開発したシステムの特性は,言語バリアフリー化,国内外からの観光客を対象とした観光スポットの推薦,AR による観光客の行動の効果的な支援の 3 点です.

主文

1.研究開発の内容

外国人観光客の増加が予想されていますが,彼らの言語格差が課題になっています.この課題を解消するためには観光システムの多言語化が一般的ですが,多言語化によって必要十分な数の言語を網羅することは難しく,真の意味で言語格差を解消するには至りません.また,観光情報には,観光地の情報のほかに,飲食店や公共施設など様々なものがあるため,観光地の土地勘がない人,地図を読むことが苦手な人,情報検索に慣れていない人が観光地を巡ることには,時間や苦労がかかる場合もあります.これらのことを考慮し,AR により言語に依存しない手段を利用した観光ナビゲーションシステムを開発しました.

2.言語バリアフリー化

本システムでは,ピクトグラム,アラビア数字,空間イメージ,地理情報システム(GIS)を利用して,言語バリアフリー化を行いました.図 1 には言語バリアフリー化した観光システム,図 2 には同じく観光スポットの検索インターフェイスを示しています.

観光システム(図 1)では,ピクトグラムは JIS 規格で定められたものとし,観光スポットの種類や移動手段を示すために使用します.移動時間や料金などの表記は,世界共通のアラビア数字のみを使用します.空間イメージは,観光スポットを容易に想像できるものとします.これらを GIS 上に重ねて表示することで,言語バリアフリー化を実現しました.

観光スポットの検索インターフェイス(図 2)は,観光スポットの種類や移動手段はピクトグラムから選択するボタン,移動時間や料金はアラビア数字から選択するドロップダウンリストで構成されています.観光スポットはピクトグラムで表示されており,表示される場所がどのような場所なのかが直感的にわかります.

3.国内外からの観光客を対象とした観光スポットの推薦

本システムには観光スポットの推薦機能もあります.図 3 には推薦の状況を示しており,観光スポットの紹介は簡単な英語で表現されています.また,この図中の上部の観光スポットと類似した特性を持つ観光スポットとして,下部の 4箇所の観光スポットが推薦されています.もし,利用者の検索意図が十分に反映されなかった場合でも,これらの観光スポットから辿ることにより,類似した特性を持つ観光スポットの情報を得ることができます.推薦される観光スポットは,図 2 の検索インターフェイスから絞り込むこともできます.


図 1 言語バリアフリー化した観光システム 


図 2 言語バリアフリー化した観光スポットの検索インターフェイス


図 3 類似スポットの推薦 

4.AR による観光客の行動の効果的な支援

本システムでは位置情報型 AR を用いて,観光客の行動の効果的な支援を行うことを目指します.携帯情報端末を通して,観光スポットを表したピクトグラムが現実世界に表示され,利用者はその場所までの方角を確認することができます.


 図 4 AR による観光スポットの 

5.本システムの有用性

本研究で開発した観光システムでは,以下の 3 点が可能になりました.

  • 言語バリアフリー化:全てのユーザインタフェースで非言語情報を用いているため,日本語・英語などがわからなくても,日本国内の観光スポットの情報収集が可能.
  • 国内外からの観光客を対象とした観光スポットの推薦:土地勘がなく,地図を読むことが苦手な人でも,国籍や使用言語を問わず,観光スポットの検索や経路案内が容易に可能.
  • AR による観光客の行動の効果的な支援:観光前には訪問したい地域の観光スポットを検索し,観光計画を立案すること,観光中には現在地近くの観光スポットを検索し,AR を用いて経路案内を行うことが可能.このため,情報検索に慣れていなくても,本システムを用いて観光を楽しむことができる.

6.本システムの運用と今後の展望

本システムは,10 月 5 日(土)から東京都調布市において運用を開始しました.本システムは専用のアプリケーションをダウンロードすることにより,すぐに利用することができます.わが国ではラグビーのワールドカップが開催されているため,調布市内の東京スタジアム周辺や深大寺周辺には,日本人観光客だけではなく外国人観光客も増えています.このような人々に,本システムを用いて調布市内の観光を楽しんでいただくことを期待しています.

以下に掲載した山本佳世子研究室のウェブサイトでは,本システムの利用方法を紹介していますので,ご関心のある方々はぜひご利用ください.また,本システムの利用後には,システムをさらに改善し,来年の東京オリンピック・パラリンピックでの利用につなげるために,アンケート調査へのご協力をお願いいたします.アンケート調査には研究室のウェブサイトからアクセスできますし,短時間でご回答いただくことができます.

 [関連するウェブサイト]

山本佳世子研究室 「言葉の壁のない観光支援システム」

http://www.si.is.uec.ac.jp/yamamotohp/

[関連するメディアリリース]

言語バリアフリーの観光ポータルサイトの開発 2018 年 1 月 4 日https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2018/20180104_705.html

地理情報システム(GIS)と複合現実(MR)を用いた時空間情報システムの開発 2018 年 5 月 7 日

https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2018/20180508_993.html

[特許出願]

情報検索方法、情報検索プログラム、情報検索用端末および情報検索装置2016 年 8 月出願

AR とピクトグラムを利用した観光支援システム 2019 年 1 月出願

[論文情報]

Shinya Abe, Daisuke Miki and Kayoko Yamamoto (2017) A Tourism InformationSystem with Language-Barrier-Free Interfaces for Foreign Visitors.Proceedings of the International Conference and Management (BEM), andInternational Conference on Marketing and Tourism (MAT), 58-66

阿部真也・吉次なぎ・三木大輔・山本佳世子(2018)情報検索システムの言語バリアフリー化.情報システム学会誌,Vol.14,No.2,57-64

Ryo SASAKI and Kayoko YAMAMOTO (2019) A Sightseeing Support System UsingAugmented Reality and Pictograms within Urban Tourist Areas in Japan.

International Journal of Geo-Information, Vol.8, No.9, 381;doi:https://doi.org/10.3390/ijgi8090381 

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