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触媒は、表面の電荷とその電荷の移動の仕方によってその作用が影響されます。電荷移動の研究はこれまで、高価で時間のかかる複雑なイメージング技術に頼ってきました。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らは、この度、複雑な機器に頼らずに電荷移動を研究する新たな方法によって、リアルタイムでの触媒の観察を簡素化する手法を発表しました。


本論文では、高温に加熱されると空気中の酸素と反応するルテニウム触媒の小さなナノクラスターを使用する実験について説明しています。触媒に付加した支持体によって検出された酸化反応は、リアルタイムでコンピューターによる読み出しが可能です。 ルテニウムは、さまざまな病態のバイオマーカーである呼気アセトンの検出に利用されますが、この手法では、触媒が反応をどのように促進するかを理解することができます。


「付加された支持体は、原則的に触媒ナノクラスターの変化に対応する電流の変化を検出します。この場合の変化は、ルテニウムが酸素と反応するときの酸化状態の変化を表しているのです。」と、ACS Nanoに発表された論文の筆頭著者であるアレクサンダー・ポートヴィッチ博士は説明します。


「電荷移動の現象を研究する際、触媒と支持体の間の界面がどうなっているかが重要なのですが、この実験セットアップは理想的なものです。クリーンな界面のおかげで、酸化反応が進行する様子を正確にキャプチャできたという自信を持っています。」



装置ではまず、ルテニウムのナノクラスター(Ru)を支持体に取り付け、200℃に加熱します。時間の経過とともに、金属が空気中の酸素と反応し、酸化ルテニウム(RuOx)が形成されますが、この反応は支持体の電流の変化として検出され、触媒プロセスがどのように進むのかを説明することができます。


これまで不可能だった触媒活性の過程を解明する多くの先行研究と比べ、この論文では反応に干渉することなくその場で観察することを可能にしました。「クロノ伝導度測定」と名付けられたこの読み出し手法は、方法論としても有益な進化です。ルテニウムの構造や化学秩序、表面電荷の変化は、その他のアプローチで検証することができます。 これらの技術を組み合わせることで、反応機構の完全で信頼できる描像が得られるのです。


この研究では、ルテニウムのナノクラスター構造の重要性も強調しています。ルテニウムは酸素と反応する際、それぞれ異なるメカニズムを示す2つの構造で支持体に結合することがわかりました。一方の構造では酸素とより完全な反応を示し、他方の構造は不活性なコアを保持していました。このことは、ナノクラスターの構造が触媒作用にどのように影響するか、そしてルテニウムのどの構造が産業用途により適しているかについて、さらなる考察へと導くものです。


電荷の移動現象を理解することは、電子顕微鏡法で使用される表面プラズモンや太陽エネルギー装置で必要な材料の研究など、触媒以外の用途にもつながります。これらのシステムを同様にその場で解析することができるようになれば、クロノ伝導度測定の技術は、様々な重要な産業工程に役立つものとなるでしょう。