関連データ・研究者

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【ポイント】

  • 糖質分解酵素の機能改変によって糖質分解活性のみを消失させ、新たな糖鎖結合タンパク質として応用し、真菌が産生するユニークな構造の多糖(β-1,6-D-グルカン)を特異的に検出する方法を開発しました。
  • 真菌症の血清診断にはカブトガニの体液を使ったβ-1,3-D-グルカン試験が用いられてきましたが、β-1,3-D-グルカンは真菌以外に植物や細菌などに含まれるため、偽陽性反応が起こることが知られていました。
  • 今回新たに真菌に特徴的な多糖構造であるβ-1,6-D-グルカンを安価かつ高感度に検出する方法を開発したことで、偽陽性反応を抑えた新しい真菌感染症診断法の開発が期待されます。
  • 本共同研究は、東京医科大学、工学院大学、東京薬科大学との間に締結された「医薬工連携による教育・研究活動の推進に関する協定」に基づき、本学と工学院大学の間で実施された共同研究活動の一環として実現されたものです。


【 概 要 】

東京薬科大学・薬学部・免疫学教室の大野尚仁 教授および山中大輔 助教らのグループは、機能改変糖質分解酵素を用いたβ-1,6-D-グルカン反応性プローブを開発し、さらにアメリカ国立アレルギー・感染症研究所、工学院大学・先進工学部・生命化学科、杏林大学・医学部、国立感染症研究所・真菌部との共同研究で、深在性真菌症の早期血清診断法に応用可能な高感度β-1,6-D-グルカン測定法の開発に成功しました。

高齢化による基礎疾患保有者の増加、移植医療の進展に伴う免疫抑制剤の長期使用、がん治療などによって免疫力が低下し、重篤な真菌感染症の発症リスクも高まっています。真菌感染症の診断では病原体の培養に数日から数週間の時間を要するケースも多いため、カブトガニの体液を利用した血液検査薬(リムルス試験)による血中β1,3-D-グルカン測定法が、診断補助法として活用されています。しかし、β-1,3-D-グルカンは一部の細菌や植物(ガーゼ)などにも含まれており、リムルス試験では稀に偽陽性反応が起こることが知られていました。そこで私たちは真菌(カビ)のみが放出する特徴的な多糖構造であるβ-1,6-D-グルカンに着目し、β-1,6-D-グルカンのみを特異的に見分ける方法の開発に着手しました。




私たちは大腸菌で大量かつ安価に安定供給できるβ-1,6-D-グルカン反応性プローブ(BGP)の作製を試みました。多糖に対する強い構造特異性・結合能を求め、エンド型β-1,6-D-グルカナーゼを機能改変し、これを新しい BGP として応用出来ることを発見しました。改変型酵素を用いた ELISA 様試験では非特異的な反応は認められず、長鎖β-1,6-D-グルカン構造のみを高感度(定量限界:1.5 pg/ml)に検出することが可能となりました。また、深在性カンジタ症のマウス感染モデルの血中からβ-1,6-D-グルカンを検出することに成功しました。さらに、250 株以上のカンジダ菌(臨床分離株)を用いた培養実験では、培養上清中にβ-1,6-D-グルカンが放出されることを明らかにしました。これらの成果から、深在性真菌症の新しい血清診断薬創出への機能改変酵素の応用が期待されます。今回の検討では単一の BGP のみを使用しましたが、様々な多糖構造に特異的に反応する BGP を組み合わせることにより、将来的に菌種特異的な構造を見分けることも可能になると考えられます。

本成果は科学研究費および工学院大学総合研究所プロジェクト研究の支援により得られました。 


【 論 文 情 報】

Development of a novel β-1,6-glucan-specific detection system using functionally modifiedrecombinant endo-β-1,6-glucanase

Daisuke Yamanaka, Kazushiro Takatsu, Masahiro Kimura, Muthulekha Swamydas, HiroakiOhnishi, Takashi Umeyama, Fumitaka Oyama, Michail S. Lionakis and Naohito Ohno

掲載誌: Journal of Biological Chemistry

DOI: 10.1074/jbc.RA119.011851

研究期間 2018年度~2019年度 (H.30~R.1) 配分総額 4,160,000 円
代表者 山中 大輔 東京薬科大学 薬学部