研究課題情報

研究課題番号

日本の研究.com 研究課題ID 日本の研究.com : 146940

厚生労働科学研究費補助金 : 201419080B

研究期間 2012年度 ~ 2014年度
(平成24年度 ~ 平成26年度)
事業区分
事業分野

研究費情報

年度 年度総額
2012 8,500,000 円
2013 5,525,000 円
2014 4,924,000 円
総額
18,949,000 円

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FSHDは、4番染色体テロメア近傍(4q35)にあるレトロ反復配列D4Z4領域のクロマチン構造を基盤とするエピジェネティックな疾患である。本研究では、申請者らの研究背景を活かし、FSHDに関して(1)ASH1と関連するクロマチン構造制御因子によるD4Z4転写制御機構の解明、(2)エピジェネティックな病態機構に着目した分子標的治療薬の開発、(3)放射性同位元素を用いるこれまでの煩雑な遺伝子診断法に代わる新たな診断法の開発を目指している。

病態解明については、DUX4遺伝子のプロモーター・レポーターの構築、マウス筋芽細胞株C2C12におけるASH1及び関連クロマチン制御因子ノックアウトの作成、ASH1ノックアウトマウスの作成、D4Z4を含むBACクローンのトランスジェニックマウスの作成を行った。治療法の開発については、D4Z4領域のnon-coding RNAに対するノックダウン人工核酸(LNA gapmer)の合成とスクリーニング系の構築を行った。遺伝子診断法の開発については、D4Z4を含むBACクローンの直接シーケンシング法の確立と、患者ゲノムからD4Z4領域を精製するためのFLAG-dCas9を用いる方法を開発した。

FSHDのエピジェネティック病態解明については、NDE領域のDNA断片を用いたプロモーター・ルシフェラーゼレポーターを構築するとともに、D4Z4トランスジェニックマウスを作成した。クロマチン構造制御因子については、ASH1とヘテロクロマチン制御因子Suz12(Polycombグループ)、G9a(ユークロマチン抑制因子)をそれぞれ単独またはASH1+Suz12、ASH1+G9aの組み合わせでダブル欠損細胞株を樹立した。現在進めているSMCHD1とASH1のダブルホモ変異体を含め、今後NDEレポーターやD4Z4-BACクローンを用いたD4Z4転写制御機構解析のための重要なツールとなる。同様にD4Z4の発現制御機構をin vivoで解析するためのASH1欠損マウスについても、エクソン2の二箇所におけるナンセンス変異を3種、SETドメインのシステイン残基を1アミノ酸インフレーム欠失する変異体を1種、それぞれ確立し、C57BL/6へのバッククロスを進めている。エクソン2のASH1ノックアウトマウスは、正常に発生し、形態学的異常もホメオティック変異も観察されなかったが、生後1日以降は致死性であることが明らかになった。この知見は、今後ASH1の機能を標的とするFSHDの治療薬を検証する際にはその副作用として慎重な検討が必要とされることを意味する。治療法の開発については、D4Z4領域のnon-coding RNAに対するノックダウン人工核酸を合成し、現在スクリーニングを進めている。また、DUX4プロモーター・レポーター発現細胞を用いた低分子化合物ライブラリーのスクリーニングも今後の課題である。FSHDの新しい診断法は、まずPacBio RSによるシーケンシングについて、de novoアセンブリに成功したシーケンス情報を用いてシミュレーション実験を行い、PacBio RSの1セル当たりのアウトプットの数十分の1のデータ量でアセンブリが可能である(即ちコストダウン出来る)ことを示した。さらに、FLAG-dCas9リコンビナント蛋白質と4番染色体または10番染色体に特異的なガイドRNAを用いてD4Z4領域を高度に精製することが原理的に可能であることを示した。よって、外来患者の末梢血から精製したゲノムDNAを制限酵素処理し、これをマグネットビーズに固相化したdCas9/sgRNAのカラムを通してD4Z4領域のみ精製し、そのDNA断片の長さを直接測定することが可能になる。

本研究は、病態解明、新規治療法の開発、新規診断法の開発という三つの柱を掲げて進めて来たが、その中、病態機構については遺伝子ノックアウト細胞やASH1ノックアウトマウス、D4Z4トランスジェニックマウスといった研究材料の準備がほぼ完成し、これから実際の解析に移行する段階になっている。治療法についても、lncRNAに対するLNA gapmerの合成とアッセイ系(DBE-T発現ベクター、D4Z4トランスジェニックマウス)の確立まで進めることが出来た。診断法については、D4Z4領域のゲノムDNA精製からシーケンシングまたはDNA蛍光染色による長さの測定まで、基本的な条件をクリアすることが出来、三つの課題の中では最も進めることが出来た。今後、新しい診断法の保険適用を目指してさらに必要とされる検出感度と特異性の検証を進めて行きたい。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーについて、病態解明のための基盤ツールとしてDUX4レポーター、クロマチン制御因子ノックアウト細胞及びASH1ノックアウトマウス、D4Z4トランスジェニックマウスを作成した。治療法については、non-coding RNA (DBE-T)に対するノックダウン人工核酸を合成し、アッセイシステムを構築した。また、遺伝子診断についてもFLAG-dCas9を用いて患者ゲノムからD4Z4領域を精製する技術基盤を完成させ、同時に反復配列をシーケンスするために必要な条件を確立した。

現在顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの確定診断には放射性同位元素を用いたSouthernブロット法が行われており、そのため診断が保険適用になっていない。本研究で確立した新しい診断法は放射性同位元素を用いず、比較的簡便に原因となる遺伝子異常を診断できるため、保険適用になれば本疾患の遺伝子診断が進み、症状が似ている他疾患との鑑別診断に利する。

該当なし

該当なし

東京都文京区シビックホールで区との共催で市民講座を開き、区報やホームページでの本疾患の紹介、講演での遺伝子のはたらきや本疾患のメカニズムから国の取り組みなどについての情報発信を行った。また、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーに関わる本学内外の研究者と患者との情報共有を図るため、日本筋ジストロフィー協会の分科会としてFSHDの集まりを立ち上げた。